第10回新人フリコン結果発表:2/18(日)14:00!

フリーゲームは自由だ

 

コラム

前回のフリーゲームコラムコンテストに引き続いての参加です。NaGISAと申します。19年以上、フリーのノベルゲームとアドベンチャーゲームのレビューを書き続け、1600本以上の作品を取り上げました。今回も、よろしくお付き合いください。

今回は、私自身が長くに渡って色々な作品のレビューを書いてきた経験に基づき、フリーゲームにおける「自由」について書いてみます。ご安心ください。堅苦しいことを書くつもりはありませんので、どうぞ肩の力を抜いて読んでください。

  1. フリーゲームは「自由」だ
    フリーゲームの魅力ってなんでしょうか。色々あると思いますが、作る側から見た場合は「自由であること」がもっとも大きな点として挙げられましょう。損益を気にする必要はないですし、読者に遠慮して本当は書きたくない「売れ線」を書く必要もありません。自分の作りたいものを作っていいのです。

商業では絶対に見られない、尖ったアイディアを盛り込んでもいいですし、ちょっと極端な性癖を存分に表現したって構いません。そのような、作者の「作りたい!」に直に触れられるのは、我々プレイヤーから見た魅力でもあります。

時々「商業で見られないような尖った作品がフリーの魅力。だから、フリーでよくある設定の物語はつまらない」という人もあります。しかしそれもおかしな話です。「作者が作りたいもの作れる」のがフリーの魅力なのですから、例えば「ファイナルファンタジーみたいなRPGを作りたい」「Kanonみたいな泣きゲーを作りたい」という動機から、似たところがある作品を作ったっていいのです。

あるいは、王道の学園ラブコメや、朝起きたら幼馴染が部屋に主人公を起こしにくる恋愛ものを作りたければ、存分にそこに自分の思いと熱量を込めればいいのです。

結局、「他にないオリジナリティのある作品を作りたい」ならそうすればいいし、「好きなあの作品みたいな物語を、自分の手で作りたい」ならそうすればいい。フリーの良さは「尖ったところ」なんかではなく、「作者が作りたいものを形にできるところ」。

フリーゲームの「フリー」は「無料」の意味ですが、自由であることがフリーゲームの最大の魅力てあることは、間違いありません。

創作が自由であるということは、感想も自由でなければなりません。作者の皆さんも、例えば「BLは嫌いだから目にするのも嫌だ。だから作るな」「エロシーンが大嫌い。だから18禁作品は滅ぶべき」「暴力シーン反対。だから流血シーンのある物語は禁止」なんて言われたら、「うるせー俺はこれが作りたいんだ」と言い返したくなりませんか?

であれば、感想を書く側に「これは駄目」「こう書いてくれ」と注文をつけるのは、創作を縛るのと同じ行為ということになります。創作の苦労とは比べるべくもありませんが、感想だって書く側が努力して自分の文章を紡ぎ上げた、「表現」に違いはないのですから。

もちろん、自由であるから何を作ってもいい、何を書いてもいいということにならないのは当然です。昔からそこはトラブルのもとになってきました。次章ではそのことについて、より掘り下げて言及しましょう。

  1. 自由とは何か
    皆さんは「自由」という言葉から何を連想しますか? 辞書によると「他からの束縛を受けず、自分の思うままにふるまえること」とあります。「好き勝手できること」が自由だと思っている人もあるでしょう。

では、その「自分の思うまま」は、本当に何の制限も束縛もない、無制限なものなのでしょうか。もちろんそんなはずはありません。

例えば自動車の運転について考えてみましょう。運転免許証を持っていれば、もちろん自由に車を運転できます。ですが、自由だからと言って無制限に速度を出したり、対向車線を逆走したりしていいかというと、いい訳はないですね。車を運転する人は、道路交通法に従わなければなりません。違反すると、それ相応の罰則を課せられます。

法律だけではありません。罰せられはしないものの、「運転マナー」というものが存在します。例えば筆者は北海道在住ですが、冬の狭い坂道で車同士がすれ違う時は、必ず下り側の車が一時停止します。何故ならば、もし上り側の車が止まると、雪のため下手したら再び車を動かそうとしても、上れなくなる恐れがあるからです。

もちろん、下り側の車が止まらずに突っ込んで、上り側の車が止まらざるを得なくなっても、別にルールには違反していません。が、そんな事態に遭遇したら、坂の上りで止まる羽目になったドライバーは、かなり気分が悪いはずです。

では何故ルールやマナーがあるのでしょうか。それは一つには安全のためです。住宅街の中を時速100キロで走ったり、高速道路を逆走したりすると、下手をすると無関係の人まで危険な目に晒されかねません。もう一つは「お互い気持ちよく運転するため」です。「自分だけが」という考えて「自由」に運転していると、他の誰かを不愉快な思いをさせかねません。運転免許を持っているなら、そういう自分勝手な行動は慎みたいものです。

このように、自由には必ず「責任」がついて回ります。そして、同じく道路を利用するにも、歩行者よりは原付バイク、原付バイクよりは自動車の方が、より移動の自由度が高くなりますが、それに比例して責任の重さも増大します。

自由とは「放縦」ではありません。自由に振舞っていいのは、ルールを守って他者を思いやれ、自分を律することができる人だけなのです。

  1. 自由とルール
    自由には、必ずルールとマナー(以後この両者を合わせて、便宜的に「ルール」と表記します)がついて回ることを書きました。そして、自由とルールは相反する要素を持つのが難しいところです。

つまり、何も考えずに好き勝手書いていたのではルールに抵触しかねませんし、さりとてルールばかりに配慮したのでは、近年のハリウッド映画のように「必ず黒人を出す」なんていう、何のための物語制作なのか分からないことになってしまいます。

そして、自由の方がルールより大事ではありませんし、ルールの方が自由より大事なのではありません。前者が行き過ぎると誹謗や中傷をしても良いということになってしまいますし、後者が行き過ぎると表現の弾圧につながりかねません。ですから創作をする人、また感想を書く人は、その両者のバランスを上手く取って書かなければなりません。

ですから、私が「創作が自由であるように、感想も自由でなければならない」と書いた言葉の真意は、「創作者がルールに配慮して、上手くバランスを考えた上で自由に物語を書いているように、感想を書く者も自分の書きたいこととモラルのバランスを取り、その中で自由に書く」ということなのです。

自由に寄り過ぎるとそれは「無法」です。そして無法がもたらすものは、反動としての「規制の強化」でしかありません。一部の行き過ぎた表現者により表現規制が強化されてしまいますし、感想を書く方だって「感想は何を書いても良いんだ」と思い、匿名掲示板で誹謗中傷まがいの暴言を吐いていると、作者側が感想にあれこれと制限をつけたり、下手をしたらそれが原因で筆を折ったりします。それでは、創作者にもプレイヤーにもメリットはありません。

自由とルールのバランスをとると言っても、実はそんなに難しいことではありません。結局は「自分の書きたいことと、書かれる相手のことを同じくらい大切にする」。これだけです。これは創作者も感想を書く者も同じです。「自由とルールが同じくらい大事」ということは、畢竟「作者とプレイヤーは、同じくらい大事」ということなのです。

こう書くと異論があるかも知れません。作者の方が上だと言う人も、いやプレイヤーの方が上だという人もあるでしょう。ですが考えてみてください。フリーゲームのプレイヤーは、遊ぶべき作品が存在しないと、プレイすることも感想を書くこともできません。その意味で、プレイヤーの方が立場が上ということはありえません。

そして作者にしても、もし完成した作品を一切誰もプレイせず、ダウンロード数もプレイ数も0だとして、それで満足する人はいないはずです(もしかしたら作るだけで楽しいという芸術家肌の作者も、いるかも知れませんが)。つまり、作った作品をプレイヤーが遊んでくれて、初めて作品は輝きを持つということです。ですから、作者がプレイヤーより上ということもない訳です。

作者あってのプレイヤーであり、プレイヤーあっての作者。これを頭におけば、それぞれの「自由」が、今までとは少し違った形で見えてきませんか?

  1. 自由なフリーゲームの世界を、みんなで
    長々と書いてきましたが、車の喩えで書いたように、「自由に運転すればするほど、気をつけないといけないことが増える」ことは、覚えておいた方がいいと思います。「自由」にTwitterなどで発言して炎上する人は、この辺りを見誤ったと言えます。車で事故を起こす人と同じです。車であれば事故を起こして思い知らされるのですが、創作や感想、実況などという行為は自分に実害となって跳ね返りにくいので、そこを図るにはやはり慎重な配慮が必要です。

無用に相手の自由を縛るような行為はいかがなものかと思いますが、時々やり過ぎて大変なことになる作者もありますし(プロでも)、また作品を尊重できない実況者によるトラブルも、「自由に伴うルールを守れない」ことによるものであると言えましょう。

作者も自由。プレイヤーも自由。実況者もレビュアーも自由。そしてみんなが幸せになれるようなフリーゲームの世界であって欲しいですし、きっとそれはフリーゲームを愛する一人一人の、本のわずかな心がけで実現できるはずです。

そんな楽しい世界を、私たちの力で作っていけるといいですね。


※フリーのノベルゲーム、ADVを19年レビューし続けている私のブログ。約1600本の作品を紹介しています。フリーノベルゲームとADVがお好きな方は、是非一度ご覧ください。
http://nagisanet.blog.fc2.com

 

(NaGISA Twitter

 

申し込む
注目する
0 Comments
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る