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フリーゲーム実況の収益化論争

 

コラム

◆『はじめに』
フリーゲーム作者とそれを実況する実況者の間に巻き起こる収益化論争について本稿では掘り下げていこうと思う。
はじめに言っておくと、筆者は今でこそフリゲ作者の立場だが、実は8年程前まで実況動画を作って投稿していた経験があり、結構長く続けていたので実況者の立場も心得ているつもりである。ただ、今回はどちらかと言えばフリゲ作者寄りの目線で語ってくことが多いと思うので、その点はご了承願いたい。

◆『フリーゲーム実況の収益化論争』
フリーゲーム最大のインフルエンサーはゲーム実況者である。
フリーゲームの知名度は、ゲーム実況者に取り上げられるか否かによって大きく左右されるため、どれだけ傑作でも実況されなければ見向きもされず、逆にそこまで面白くもない凡作でも流行りの実況者やバーチャルアイドルが取り上げれば、無駄に話題になって持ち上げられるといった事が多々ある(広告をバンバン打って宣伝すれば実況者なしでも有名になれるかもしれないが、フリゲ作品にそこまで力を入れるクリエイターは珍しい)。
善かれ悪しかれ、それが「フリーゲーム」である。上記のように、フリーゲーム文化の発展にゲーム実況者の介入は必要不可欠なのだ。
しかし、昨今の界隈において、そんなフリゲ作者界隈とゲーム実況界隈の間で、TwitterなどのSNSを中心に論争が頻発している。一体それはなぜなのか?
原因は主に『収益化問題』である。
十数年前みたくゲーム実況も趣味だった時代とは打って変わりゲーム実況がビジネス化した今、配信者やVtuberと言った界隈がフリーゲームを実況し、再生数に応じた動画収益やスパチャなどで多額の収入を得ている。
反面、肝心のフリゲ作者には一銭もお金が入らないといった構図が当たり前となり、それによって様々な問題が引き起こされているのだ。
フリーゲーム制作とゲーム実況は古くはお互い「単なる趣味」同士でしかなかったからこそ上手く行っていた節があったのだが、時代の流れと共にどうしてもゲーム実況界隈にだけ利益が発生してしまう構造になった関係上、昔はそこまで問題にされていなかったことでも今では軽く論争に発展してしまうケースが多い。
例えば、フリーゲームやその作者を貶しながら実況する者がいたとしよう。これを単に利益にもならない個人のストレス発散・愚痴程度でやっていれば「不快な野郎だ」と思っても、「そういう意地の悪い奴もいるだろう」とフリゲ作者はまだ許容できるところがある。
しかし、これを事務所と契約しているそれなりに大きなトレンド実況者が収益化してやっていればどうだろう。フリゲ作者からしてみれば、ある種のタレントに自身の善意が踏み躙られ、その挙句に金まで稼がれているといった感覚であり憤慨案件だ。
また、ライブ配信にて「実況者が、飛んでくるスパチャなどのお金ばかりに目をやって実況を放棄し、ちゃんとフリーゲーム作品のプレイに向き合わない」といった光景も昨今の実況界隈で目にする機会は多いだろうが、これもフリゲ作者にとっては憤慨モノだ。
後述するが、フリゲ作者にとってのフリーゲームとは苦労の末に生み出した分身のような存在である。いくらチープなクオリティであろうが、個人の思いがつまった作品を「なにより金のため」に邪険に扱われるという行為は最大の屈辱であり、加えてこちらは善意で無料公開しているものだから作者の感じる不快感は計り知れない。
このように『実況行為に収益が発生することが一般的となったこと』が原因で、フリゲ作者とゲーム実況界隈の間に大きな火種が生じてしまい、以前までの良好な関係が維持できなくなって来ているのだ。
金銭が絡むと人間関係に溝ができると言うがまさにその通りである。

◆『2者の対立を煽る”実況者リスナー”という存在』
ここまでフリゲ作者が一方的に怒っているように語ってしまったが、「論争」ともあるようにゲーム実況界隈側もゲーム作者に対して反論している。
その反論には、「そんなに一方的に搾取されるのが嫌ならそちらもゲーム作品を有料化するなりなんなりして金を取れ」、「フリーゲームは実況者がいなければ成り立たない存在なのだから逆に実況されているだけ有り難く思え」といったフリゲ作者の毛を逆撫でるような意見が大半であり、対立を悪化させる事態となっている。
ただし、先んじて反論しているのはどちらかと言えば実況者本人ではなく、その取り巻きのリスナー達であり、この論争の対立構図は「実況者とフリゲ作者」ではなく「実況者のリスナーとフリゲ作者」である所が大きい。
不快な実況を行なった実況者に対してフリゲの作者が苦言を呈すれば、反発してくるのは大体その実況者の過激なファン、リスナーである。
昔から人気の実況者にはこういう厄介なリスナー(いわゆる信者)がたくさんいたものだが、昨今ではそれがさらに増えている現状である。それは何故かと言えば、実況者のアイドル化、タレント化が昔よりも顕著となったことに起因する。
これは筆者の考えだが、黎明期の実況は「路上ライブ」みたいな感覚だったのが今や「大物アイドルの大規模ライブ」みたいになっており、思い入れが強くなる分、盲目的に実況者を追って客観的に観察できない信者的リスナーが増加しているのだろうと考える。
こういう過激リスナー達は、自分たちの教祖的存在である実況者の言動をすべて無条件で肯定するため、基本的にフリーゲーム側の肩を持つことは無い。フリゲ作者の主張がどれだけ正しかったとしても、教祖に仇なす者であれば誰であろうと徹底的にこき下ろすのだ。
以前とあるフリゲ作者が、とあるVtuber実況者に対して自作品の実況の仕方に関しての指摘を行なったところ、そこのリスナーに袋叩きにあって暴言を送りつけられていた事件があったのだが、それを見てしまえば一目瞭然であろう。
このフリーゲーム実況に関する諸々の論争は、フリゲ作者が押し負けて収束することが多いのだが、大抵はこの実況者擁護リスナーの数の暴力が作用している。

◆『フリーゲーム制作は意外にも大変』
さて、ここからはフリーゲームの制作事情について解説する。
フリーゲームは、無料でチープ、インディーゲームの下位互換と言った認識ながらも、ポンポン生み出せるわけでは無く、実は完成させるのにはそれなりの労力を要する。
苦労の末に完成した産物を、フリゲ作者達は善意から無料公開しているわけだ。
実際に作っている者なら周知の事実だが、そんな苦労を知らない者も多く、そういった配信者が軽率に実況を行なってしまうことでフリゲ作者から顰蹙を買い、小競り合いの原因となってしまう。
そうならないためにも、しかとここでフリーゲーム制作の大変さをお伝えしようと思う。
まず何が一番大変かといえば、他の趣味に比べて時間コストが多く掛かるという点だ。イラストを描いたり、小説を書いたりと云った同じくパソコン上でできる物作り趣味と違い、物語構成、作曲、イラスト制作、ゲームグラフィック制作、プログラミングといった複数の作業を少人数、またはたった一人でこなさなくてはならず、他サイトから素材を借りたとしても最低、物語構成とプログラミングはしなくてはならないため、膨大な制作期間を要する。中でも物語構成であるが、いくら秀逸な脚本を完成させたとしても、ゲームを作る上で様々な制約が生まれるため、ゲーム的に面白い内容に落とし込む作業も必要であり、そこが一番大変なまである(特にツクール・ウディタ製みたいな2Dゲームだと表現が狭められる分尚更それが顕著である)。
凝り具合にもよるが大体クリア1,2時間のゲームを作るのに最速でも1年程度は掛かる。しかし、それは暇を持て余した学生クリエイターの場合ならそうなのであって、本業を優先する働き盛りの社会人クリエイターとなると最速でもその倍以上の年月は掛かるだろう。飽き性の者なら確実に途中で投げ出してしまうような非常にコスパの悪い最悪な創作趣味である。フリーゲームの制作を途中で諦めることをこの界隈では「エタる」というのだが、長編作品や凝った表現の作品を作る作者ほどエタる率が高い。
また、制作費用に関してだが、フリー素材を使用して作っているならまだしも、有料素材を使っている場合なんかは完全に赤字である。関連グッズ販売やサイトのバナー広告などでそれを賄うフリゲ作者もいるが、そういった者は少数だろう。

◆『”無料公開”というフリーゲーム文化の特質』
ではなぜ、フリゲ作者たちはここまで苦労して、血反吐を吐いてまで無料のゲーム作品作りに没頭するのだろうか?
それは簡単である。「自作品をプレイした者が、自分の描いた世界観に対してどういった感想を抱くのかを知りたい」、または「単に自分の作った世界を、無償でも良いので体感して欲しいから」、ただのそれだけである。ただのそれだけのために、このフリークリエイターたちは貴重な生活の余暇を割いてまでゲーム制作をするのである。
有名実況者に取り上げられて、相乗効果で有名になれるのは嬉しいが、それだけではフリーゲームを作った意義は感じない。
フリーゲーム版「Ib」のガイドラインにて作者のkouri氏が、実況規約事項において「実況の収益化は禁止」とした上で、『(ゲームは)プレイしてもらうために作ったもの』、『初見プレイ時のあらゆる衝撃こそゲームの一番の価値』と記載しているように、実況して知名度向上に貢献してくれるのは嬉しいが、実況するにしても「ゲーム作品」に対して最低限の理解を持って接して欲しいというのが、ゲーム実況者に対するフリゲ作者全体の本音であろう。
自分の作った作品で遊んで笑顔になってくれること、自身の世界観を認められること、それが「フリゲ作者の創作欲の原動力」だ。
また、フリーゲームとは、古き良きインターネット文化の様式美を未だに色濃く受け継いだコンテンツである。
「好きなことをお金にする今のネット社会」の波に乗って様々なネット文化が有料コンテンツ化していく中、フリーゲームという文化は不変のまま、「ユーザーが趣味や善意でネット文化を支えていた過去のネット社会」のポリシーを遵守し、ここまでやってきた経緯がある。
フリーゲームの実況収益問題に「一方的に稼がれるのが嫌なら作者側もゲームを有料化しろ」という意見があるのだが、それだと単なるインディーゲームとなってしまい、これまで紡いできた上記のような伝統文化やポリシーを踏み躙ることになってしまうため、こだわりの強い作者ほど躊躇してしまうのだ。
ただし、昨今は諦めのついた作者が増えているのか、指針を変えてインディーゲーム界隈へと流れる者が多いように感じる。フリゲ文化を重んじている作者なんて、もはや近絶滅種であろう。

◆『フリゲ作者は今後どうすればいいのか?』
はっきり言ってしまえばフリーゲーム文化は時代錯誤である。
前述したとおり善意で文化を紡ぐ旧時代のインターネット社会は終わりを告げ、今やお金を稼いでナンボの社会である。高品質なものを善意から無料公開しても、そこから善意が連鎖して広がり、文化を形作っていくわけでも無い。この現代のインターネットの構造上、その良心につけ込まれて搾取され続けるだけだ。
それが嫌なら、やはり第三者が言うようにフリゲ作者も収益化するしかないのかもしれない。実況者が一方的に収益を貰っている現状が嫌なら、最低限こちらもなにか金銭的見返りのある環境に身を置いたりすれば精神的にかなり楽になるだろう。
以下、実況で一方的に収益を稼がれるのが嫌なフリゲ作者が取るべき行動をまとめたものである。
①【フリーを完全に捨て、ゲームを有料化する】
②【自身のサイトで作品を公開して広告等で稼ぐ】
③【自作フリーゲームの関連グッズを売る】
④【実況者と提携して収益の一部を貰う】
⑤【そもそも実況を禁止する】
多くの作者が選択しているのは、やはり①か②であろう。
③④は、ある程度の知名度のあるフリゲ作者で無いと厳しいところがあるし、⑤は最大のインフルエンサーである実況者を切ることによって知名度を得る手段を完全に絶つことになるので色々リスクが大きい。
だが、①②も安定しているとは言えず、知名度に関して言えばインディーゲームに移行したり、大手のフリゲサイトから個人のサイトに移行したりすると知名度は大きく下がってしまい、収益云々の話も夢のまた夢となってしまうので一筋縄ではいかないのだ。
筆者の考える理想は、面白いフリーゲームにはちゃんと相応の投げ銭が支払われるようなシステム、風潮の確立である。
インディーゲームみたいに作品を販売する形でも無く、従来のフリーゲームみたく完全に無償の善意だけで成り立たせている形でも無い、いわば中間のような位置づけだ。
フリーゲームにチップを投げる投げないという手順を一般化することで、作者自身は「作品が面白ければ金銭的見返りが見込めるかもしれない」というモチベーションアップに繋がるし、プレイヤーも手軽に投げ銭ができる環境があれば利用する人は今よりもっと増えるだろう。
確実ではないが金銭的見返りもあるし、フリーゲームが特質として持つ過去のインターネット文化のような善意のポリシーは遵守しているし、これこそが最良の手だと思える。
しかし、現在フリーゲームに対する投げ銭システムは様々な専門サイトで導入が進んではいるがまだ十分とは言えず、いくら面白いフリーゲームが存在するとて、皆わざわざダウンロードサイトにまで足を運んでチップを送るといった風潮も無い。これらに対する課題はまだまだ山積みのようだ。

◆『最後に』
筆者はフリーゲーム文化が好きだし、フリーゲーム実況ももちろん好きである。なので、フリゲ作者とゲーム実況者にこれ以上無益な争いを起こして欲しくない。両者が争った末に待っているのは共倒れか、フリーゲーム文化の絶滅だけである。
フリゲ作者と実況界隈がお互い対立しないためにも、両者がWIN-WINになるような構造がはやく確立して欲しいと切に願っているし、自分も積極的に行動していきたいと思っている。

 

(ムキムキチワワ Twitter

 

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1 Comment
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田中タパラ 👾
田中タパラ 👾
2023年1月21日 1:52 AM

ここ最近よくある配信者とフリゲ作者問題についての記事、製作者だけでなく利用者も読む価値ある記事だと思います。
私もネットでフリゲ作者さんが配信者に自作のゲームを配信でゲーム実況どころか色々ボロクソに言われたなんて事を目にすると悲しいですね。
歌わせて頂きました動画(世間一般では歌ってみたとか言われてる動画)みたいにゲーム実況は人気や集客を維持する為の道具と言うのはありますし食い扶持の為に仕方ない所はあると思いますね、それでも利用している以上制作物に対して最低限の態度でも良いから接して欲しいってのは製作者として大いにあると思いますね。(不具合に関しては全力でごめんなさいですが)
何のためにゲーム実況にその題材を選んだのか?心からこのフリゲが好きなんだ今見てるお前ら直ぐにDLしてやれ!って位熱意ある方だと良いんですけども、全員がそうでは無いと言う。
現実は記事内でも言われている様になかなかに色々と難しいと言う。

何度もあちこちで言われている内容ですが、この様な場で改めて提示される事も含めて評価したい記事だと思います。