第7回新人フリコン 最終審査は2/11(土)まで!

フリーホラーゲームは絶滅寸前だ!

 

コラム

筆者はフリーホラーゲーム制作に、天より授かりし人生の貴重な6年を費やした狂人である。なので、並の人間よりはこの界隈に詳しいと自負している。
“フリーホラーゲーム”はフリーゲームの中でも突出して人気の高いジャンルであり、数多くの名作が世に出た黄金期(2010〜14,15年  ※諸説ある)には「フリーゲーム=フリーホラーゲーム」という認識が一般層に定着しているほどだった。
チープなグラフィックやシステムだからこそ醸し出される独特の怖さ。つぎはぎのドット素材から溢れるアンバランスな雰囲気と、同時に感じることのできる手作り感満載の温もり。明らかに市販の高クオリティのホラーゲームには劣っているのだが、それらにはない魅力がふんだんに詰まっているし、なにより個人制作が故に作り手の愛を感じる。しかも、それがなんと頭から尻尾まで無料でプレイできると言うから驚きだ。筆者はそんなフリーホラーゲームの魅力に取り憑かれてしまった哀れな青年である。
ちなみにフリーホラーゲームと言っても色々あるが、世間での一般的なイメージはやはりツクール製とかウディタ製の2Dドットの探索脱出ホラーアドベンチャーだろう。Unity製やUnreal Engine製のフリーホラーゲームもあるにはあるが、如何せん数が少なく、どちらかと言えばそれらは、インディーホラーゲームといったイメージが強い。
さて、6年間この界隈に深く入り浸って分かったこと、それは「フリーホラーゲーム文化は年を追う毎に急速に衰退しており、今や絶滅状態にある」という事実である。人によっては既に絶滅していると断言する者もいる。
では画面の前で「何を以てしてそんなことが言えるのだ!?」と思っているそこのあなた。答えは明白である。

①『ニコニコ動画やYouTubeでフリーホラーゲーム実況動画が激減しているから』
というか、これが最も顕著にフリーホラーゲームの衰退を表している。
フリーゲームの最大のインフルエンサーはゲーム実況者である。有名実況者が取り上げなければどれだけ傑作でも見向きもされず、逆にそこまで面白くもない凡作でも有名実況者が取り上げれば、無駄に話題になる。
筆者の作ったゲームがその一例である。筆者が暇な時間を利用して1週間余りで作った超低コスト脱出ホラーゲームがあるのだが、運良く超有名な実況者が取り上げて下さった事で爆発的なダウンロード数の伸びと、知名度の向上という恩恵を授かったことがある。
今から10年〜15年ほど前はゲーム実況バブル期であった。当時は収益化などのシステムが無かった&普及してなかったので、今みたいな収益を目的とした実況ではなく、単に趣味レベルの実況動画である。
その中で脚光を浴びたのがフリーゲーム実況。市販のゲームと違ってコストも掛からない上に著作権侵害の心配もないためである。その中でも特にホラーはリアクションも取りやすくインパクトも生むので視聴回数の伸びが良かった。
フリーホラーゲーム実況が活発化していくと同時に、ホラーの名作が次々と発掘されていき、2010年代初頭に入ってからは遂に最盛期を迎えた。実況効果で知名度と評価を上げた何作かのフリーゲームは、映画化や書籍化、グッズ化など様々な方面へと展開されていき、それらに憧れたアマチュアクリエイター達が続々とフリーホラーゲーム界隈に参入、新作が生み出され続けた。
しかし、この繁栄も長くは続かない。YouTubeコンテンツの多様化でゲーム実況人気に陰りが見えてきたこと、収益化や企業案件のゲーム実況、基本無料ゲームの登場などで、実況界隈とフリーホラーゲーム界隈は大きく様変わりしてしまうこととなった。現在、フリーホラーゲームを扱う実況者はほんの一握りである。
昔のように実況をきっかけとして、そのフリーホラーゲームのファンになる、といったことがほぼ見られなくなったのだ。

②『ホラーゲーム需要はインディーゲームが担っている現状だから』
10年そこそこ前まではホラーゲームといえば、市販のソフト以外では、フリーホラーゲーム(Flash,ツクール系,Unity製など)だった。しかし、近年では時代の変化の中でその役割がインディーゲームへとシフトしている。
インディーゲームは、個人制作の特性を活かした奇抜な発想や、独特の粗、芸術性などフリーゲームと同様の魅力で溢れているのだが、唯一違う所が「有料」という点である。有料だからこそ最低でも「金銭的見返り」が保証されるため、手間暇かけて作られた高クオリティなゲームが次々と生み出されているのである。多種多様なゲームエンジンが普及している今は更にその傾向が強く、フリーホラーゲームを凌ぐ勢いで良作ガチホラーゲームが量産されており、それが次々と実況されることによって人気を拡大している。まさに「インディーホラーゲームの黄金期」であると言えよう。
先ほど”時代の変化”と言ったがそれはどういうものかというと、今の時代は「善意で、無料で提供する」といった文化が成り立たなくなっているのである。
昔のインターネット文化は今のような稼ぎの場ではなく、利用する人の趣味で成り立っていた部分が大きかった。しかしYouTuberの台頭などといった収益化の流れに伴って、インターネット上のコミュニティも変化して行ったとされる。
例えば以前までは「趣味で作られたフリーゲームを、配信者が趣味で実況プレイしていた」のだが、現在では「趣味で作られたフリーゲームを、配信者が実況して多額の収益を得ている」状況であり、非常に不公平感がある。自家菜園の野菜を「煮るなり焼くなりどうぞ」と善意で町民に配ったら、配るや否やその野菜を使って目の前で商売されるような感覚である。タダで配る方も配る方で何も言えない節はあるが、不快感を覚えるのは確かであり、こうなってくれば自家菜園の野菜は配らずに販売する流れになるのは自然だろう。
実際こういった文化の変遷に伴い、元々フリーホラーゲーム界で活動していた数多の凄腕クリエイター達が、インディーホラーゲーム界に移住していったのだ。昨今、過去の名作フリーホラーゲームが次々とリメイク化してSteamやコンシューマゲーム等で販売されている事実がその証拠である。また、これから個人制作でホラーゲームを作ろうという新参クリエイターの多くは間違いなく「インディーゲーム」という道を選択することだろう。

③『怖くて面白い、傑作と呼べるフリーホラーゲームが無さ過ぎるから』
筆者は過去にSNSで「今でも名作フリーホラーゲームは沢山作られているけど、埋もれているから話題に挙がってないだけ!」と主張していたが、撤回する。
本当に怖くて、奥深しいストーリー性を持っていて、ゲームとしての面白さもあって、芸術性の高いフリーホラーゲームが昨今の界隈において全くと言って良いほど出てきていない。表面的なクオリティは断然10年前より上がっているのだが、肝心の内容がどんどんレベルダウンしているように感じる。
これについて考えられる理由はいくつかある。
1つは②でも述べた通り、ゲーム制作の熱意を持ったクリエイターの多くがインディーゲーム界隈に流れたであろうこと。
1つは単にネタ切れ。
1つは、まぁこれは筆者の個人的な推測であるが、”ホラーゲーム”という肩書きを利用してダウンロード数を稼いだり、話題になろうとするフリゲ制作者が増えたであろうこと(昔からいたかな?)。
「ホラー」はインパクトを生むコンテンツであり、話題を作りやすい性質を持っている。そのためフリーゲーム界においてもホラージャンルが突出して人気なのだ。
これに目をつけたフリゲ作者たちが、微塵もホラー要素のない作品にこういったタグをつけまくるため「ファンタジーな世界に迷い込んだ女の子が現実に戻るために頑張るADV」といった内容に「ジャンル・ホラー」と付いているような現状になってしまっている。
こうなってくると”ホラー”が何でもありのジャンルになってしまい、フリーホラゲ界に残った数少ないクリエイターのホラゲ制作意欲を削ぐだけなのである。YouTubeのとある動画のコメント欄に「今のフリーホラーゲームは、よく分からない方向に進んでいる」的なコメントがあったが、全くその通りだと思った。
そして最後にもう1つ。
これも仮説に過ぎないが、現代人の急激なホラーコンテンツ離れもフリーホラーゲームが面白くない原因なのではないか。ストレス社会なためか、過度なホラーコンテンツに嫌悪感を示す人々が激増したような印象を度々受ける。
少し前まではジャンプスケアや猟奇的な描写の含まれるフリーホラーゲームが話題にあがることが多かったが、現在ではそれらが忌諱される傾向にある。「もっとハッピーなストーリーがいい」だとか「美少女キャラが欲しい」だとか「怖すぎると疲れる」といったお門違いな要求が後を絶たない。そのためか、クリエイターもガチホラーよりもマイルドホラーを作る者たちが増えたような印象だ。
筆者のつくるフリーホラーゲームも、基本的にジャンプスケアと猟奇的な描写で構成されていると言っても過言ではないのだが、その点に関して前述のような批判を受ける事が多々ある。
昨今のフリーホラーゲームのラインナップをズラッと見てみても、「美少女、またはイケメンの幽霊と切ないひと時を過ごす」だとか「ホラーあるあるをメタ的に茶化す」といった、限りなくホラーではないホラーゲーム(過去のフリーホラーゲームの持っていたようなシリアス性が欠如している作品)が比較的人気を博しているように感じる。これらの点もフリーホラーゲーム界隈を味気なくしている大きな要因ではないだろうか。

さて、ここまで長々とフリーホラーゲームがどれほどにまで衰退しているのか、またそれは何が原因なのかをある程度深く考察してきた。
フリーゲームというジャンル自体はまだ小さなコミュニティで細々と続いているが、「フリーホラーゲーム」はハッキリ言ってもはや絶滅寸前、風前の灯火状態である。それは、コミュニティの盛り上がりとかの問題以前にそのジャンルの作品自体が姿を見せなくなりつつあるレベルである(ホラーモドキの自称フリーホラーゲームは幾つかあるが)。
ただし、上記はあくまで作者の主観が入っている部分が大きく、ホラーモドキの自称フリーホラーゲームでも人によっては「怖い、王道だ!」と感じるかも知れないし、「フリーホラーゲームは衰退なんてしてない!」と言う人だっているだろう。だが、筆者の中では間違いなくフリーホラーゲームは衰退しており、この文化をどうにかして継続していけないかと頭を抱えている。
筆者は、丁度フリーホラーゲーム黄金期の2010~2015年に青春を過ごし、大いに楽しんだ。友人宅にみんなで集まり交代で布団を被りながらプレイしたり、フリーホラーゲーム関連の映画を観に行ったりしたことだってある。YouTubeの実況動画のお陰でクラスでもかなりの人数の人とフリーホラーゲームの話題で語り合えた。
時代の中で、「青鬼」をはじめ、「Ib」、「マッドファーザー」、「怪異症候群」、「哥欲祟」といった黄金期のゲーム作品群に憧れて、自分もフリーホラーゲーム制作を始めた口だ。しかし、ゲーム制作活動を開始した2017年は既にフリーホラーゲームが急速に衰退し始めていた時期であり、そこからは活気を失っていく界隈に肩を落とす日々である。
時代の変化だから衰退しても仕方ないという声もあるが、やっぱり筆者はフリーホラーゲームの魅力をこれからも伝え続けていきたいと感じている。だから、こんな荒野で一人、フリーホラーゲームの新作を作り続けている。自分の作品がフリーホラーゲームブーム再熱のきっかけとなればいいなと思って。

 

(キムキチワワ Twitter

 

コメントを贈ろう!!

※コメントのルールを必ずお守りください(^^)詳細はコチラ

0 Comments
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る