第10回新人フリコン結果発表:2/18(日)14:00!

個人的、ノベルゲーム文章のコツ

 

はじめまして。タカスガタイキといいます。
おもにフリーのノベルゲームを作っています。

第4回フリコンでは大変お世話になったので、コラムの方にも投稿してみようと思いました。

何を書こうか迷いましたが、うちの作品は文章を褒められることが多いので、今日は、自分が個人的に気を付けている「ノベルゲーム文章のコツ」について書きたいと思います。
あくまで個人的に気を付けていることなので、どこまで汎用性があるかわかりませんが、少しでもご参考になれば幸いです。

(なお、ここで語る知見は、全画面テキストタイプのノベゲについてです。僕がいつも作っているのが、このタイプなので)

大別して、ノベゲ文章のコツは以下の4つくらいかなと思います。

・わかりやすい文章
・読み返しをしなくてもいい配慮
・描写を省く
・描写をからめる

順に解説していきます。

・わかりやすい文章

もう、ほぼこれに尽きるといっていいんじゃないでしょうか。
基本、世に溢れているノベゲはどれも面白いので、あとはそれがどれだけ率直にユーザに伝わるかな気がしています。

具体的には、自分の場合、ノベゲのテキストは、一文の長さが20字くらいに収まるように心がけています。別に19字でも21字でもいいですが、大体一行に収まる量ということです。

このくらいの長さだと、読んでいてぱっと認識しやすいです。うちは読点でクリック待ちさせるので、一文の長さが20字以内で揃うということは、つまりクリック待ちのリズムが揃うということでもあります。リズムが揃った文章は、気持ちよくクリックしていくことができて、読んでいて快適ですよね。また「20字超え文章チェッカー」みたいなツールを自作すれば、推敲をある程度自動化できるというメリットもあります。

20字制限があるので、必然的に複雑な文構造を避けるようになります。なるべく単純なSOV文になるように。SOV and SOV.みたいに構文が連鎖する一文は、なるべくそれぞれ単独のSOV文に分割を意識。そうでない構文も、分割できないかなるべく模索します。

誤読も避けます。「白い猫の皿」みたいに修飾がどこにかかるかわかりづらい文とか。「太郎は走った猫を追いかけた」みたいに、主語の後にすぐ動詞が来るような文章とかも、一瞬え?となったりしがちなので要注意です。

長い主語も避けたいですね。主語が長いと、それだけ文章把握に時間がかかるので、なるべく短く簡潔に。一番簡単な方法は、修飾を、別の一文として後ろに退避させることだと思います。特にlike a的な修飾は退避させやすいです。ちょうどこの一文みたいなかんじに。

重要な情報は、なるべく画面の左上に来るよう心がけています。画面右端だと「読み滑り」が起こるリスクがあるからです。全画面テキストのページング処理を一単位として、その各ページ内で主題となるべき事柄が左上付近に集まっていると、とってもいいかんじです。

改行は、一文単位でしています。20字制限により一文は大抵一行なので、ほぼ毎行で改行する形です。改行した文章は、ある程度のブロックごとに空行を挟みます。この空行が段落がわりになります。文章が長くて行を跨いでしまう場合は、句点などで改行します。

ページングは、画面の真ん中くらいを目安に挟みます。画面いっぱいに文章を埋めることは、まずありません。理由は、右端に重要情報を置かないのと一緒で、読み滑りの防止です。それと、視線の往復で目が疲れちゃうのを避ける意味もあります。基本的に、読み手の目は画面の左上から真ん中付近をぼんやりフォーカスしていて、そのままリラックスした状態で、スムーズに情報が入ってくる状況が理想です。

個人的には、上記を実施すれば、それを実施してないテキストに比べて、だいぶ読みやすくなるんじゃないかな~と思います。

・読み返しをしなくてもいい配慮

次は、読み返しをしなくてもいい配慮についてです。ほとんど「わかりやすい文章」とニアリーイコールですけど、一応分けました。

ノベゲの特性として、本や電子書籍に比べて、気軽に読み返しができないという点があげられます。

バックログ機能はありますが、ずっと前の記述を瞬時に遡るような使い方には向いていません。途中でセーブすれば、次の一行を読むのは一週間後かもしれません。ただでさえ音や絵と同時に文章を摂取しているので、ユーザの短期記憶能力も下がり気味傾向です。

ページ跨ぎの「こそあど」には特に注意が必要です。大体、何のことを言っているのか行方不明になります。ページを跨いだ場合、なるべくもう一回、話の主題となる単語を明示してあげるのが、親切だと思います。また、「つまり/要するに、○○ということだ」など、時々さりげないおさらいを入れてあげるのも、うまいやり方です。過去を振り返っているなら、ダイレクトに過去回想シーンを入れちゃうのが視覚的でいいと思います。

結果的に、似た文章を作中で何度もリフレインするような形になっちゃうので、慣れないと違和感があるかもしれませんが、大事なのは読み手にとって親切かどうかです。特に、「ひさしぶりにゲーム再開→これどういう場面だっけ?」みたいになると、そのままゲーム終了しちゃう可能性もあるので、大切な気遣いだと思います。

・描写を省く

これはよく言われることですが、ノベゲは背景や立ち絵、音があるので、視覚や聴覚の描写については、かなりカットしても大丈夫――というか、それを見越して描写を省いておかないと、文章がクドくなっちゃいがちです。

喫茶店なら喫茶店、駅前なら駅前、背景にはそれぞれのイデア(物事の本質。喫茶店って大体こんなかんじだよねーという万人の共通イメージ)があるので、あまり描写しなくても、ある程度イデアまかせで読み手に脳内補完してもらうことが可能です。

「台詞で伝わることを省く」みたいなことも、よくやります。「お父さん、醤油とって」「ん」みたいな会話なら、わざわざお父さんが醤油をとる動作を克明に描写しなくても多分伝わります。それなら、その分の文字数を使って、別の描写をした方がお得です。

基本的に、文章というのは推敲した結果、短くなった方がいいと思います。増やすのは簡単だけど、減らすのは難しいからです。難しいことは意識的にやった方がいいです。

好きな逸話で、パスカルが友人に宛てた手紙というのがあります。パスカルは「人間は考える葦である」という言葉を残した偉大なヒューマンですが、そのパスカルが、ある日の友人への手紙に「今日は時間がなかったので、手紙が長くなっちゃった。ごめんね」という一文を添えました。時間がないなら、普通手紙は短くなるものですが、ここでパスカルが言っているのは、推敲する時間がなかったので、文章を削ぎ落して短くまとめられなかったよ~ということです。推敲とは文章を減らすことと見つけたりってかんじで、勇気づけられます。

推敲する時に考えるのは、その文章が冗長ではないかです。その文章がなくても話が成立するか? むしろない方がいいのではないか? 上の「お父さん醤油とって」の例でいうと、もしこれを克明に地の文で説明していたら、僕はその文章を推敲で削ります。その文章は、あんまりお得じゃないからです。

・描写をからめる

さて、描写を省いたら、今度は描写をからめるです。

推敲して、文章を取捨選択していくと、結局、最終的に残るテキストは、すべてが何らかの形で作品表現に寄与している――お得な文章ばかりという状態になると思います。全く寄与していない文章なら、既に削られているはずだからです。

ただ、全く寄与していない文章は省けても、寄与しているかしていないか微妙な文章というのはあるものです。

たとえば、主人公が空を見上げるシーンがあって、これがいるかいらないか悩んでいるとします。特になくても成立するっちゃするし、別に空じゃなくて、噴水で遊ぶ子どもを眺めていてもいいはずです。何故空なのか。

削ってもいいですが、ここでは残すアプローチを考えてみます。

残すか残さないか迷っているということは、作品に貢献している文章なのかが不明確だということ。だとすれば、もっと明確に作品に貢献させられないか考えます。

たとえば、物語の後半で、この空のシーンが意味をもって引用されれば、空のシーンは伏線として効いており、より作品表現に寄与しているといえます。そうやってうまく意味づけできた文章を残し、うまくいかなかった文章を削っていく。単純明快ですね。

面白いことに、お得感は時々連鎖します。その空は、たとえば、作品上の重要なメタファーとして機能するかもしれません。別のシーンの○○と対比させることができるかもしれません。○○は、更に××と繋がるかもしれません。こうしてお得感同士が相互作用していくと、シナリオ全体の深みがどんどん増していきます。まるで全部計算され尽くした文章みたいな。実際は結構パッチワークなんですけど。

というわけで、「わかりやすい文章」「読み返しをしなくてもいい配慮」「描写を省く」「描写をからめる」でした。

長くなっちゃいましたが、今回はここまで。
この記事が、少しでも皆さんのお役に立てばうれしいです。

何か追記や忘れてることがあれば、また別記事で補足するかもしれません。

 

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