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モモグリ先生とRPGツクール

 

週間ファミ通を定期購読していない自分にとって、桃栗たき子さんを知ったのは「RPGツクール SUPER DANTE」の攻略本でした。その時はたくさん技術を持っている方なんだな~程度の認識だったのですが、続編の「RPGツクール2」でサンプルゲームを作られたということで、実はものすごい方だったんだと思い知らされた記憶があります。2の攻略本でも沢山のテクニックを紹介、そしてサンプルゲームができるまでの記事を掲載していました(記事によればサンプル制作の期間は3週間とのこと)が、自分が一番共感し、今の自分の制作スタイルにまで影響を与えているのが、桃栗さんの「ゲームの作りかた」と「ゲーム作りに対する姿勢」。

「『ゲーム作りの流れ』なんかについて深く考えたりしたくない」
「さつまいもスナックでもかじりながら、プッてな感じでゲームを作りたい」
「とりあえず面白そうなイベントをいくつか作って、後からデキトーに繋げてストーリーを膨らませりゃいいや」
失礼を承知で言わせていただければ実に適当、いい意味でのいい加減さ全開ではありますが、自分は桃栗さんのこのスタイルに救われました。

サンプルゲームを作る程の超人でもこういう考えってあるんだな、と思うと同時に「こういう作り方も許される」という、謎の安心感がありました。それ故に自分はいわゆる「紙の上の作業」や「ツクール外での構想」はほとんどしたことがありません。攻略本巻末のツールキットは見事に白紙です。とりあえず「とにかく完成させるぞ」と完成への本気度を高めたら、あとは「ああしなきゃダメ」「こうしたらダメ」に囚われず好きなように作る、作っていい。

ストーリーの終わりは最初に考えはするけど「大体」ですし、イベントもその場の勢いと思い付きで入れて大抵はそのまま、なかなか思いつかない部分はとりあえず保留にして次を作る…。いい加減極まりない制作スタイルですが、結果として最終的にはちゃんと作品は完成する。この作り方がベストかどうかは分かりませんが、少なくとも「自分には合っている」と思っています。それを教えてくれたのは、それに気づかせてくれたのは桃栗さんであり、その事には大いに感謝したいと思っております。

そのおかげであれから25年以上、コンシューマー版からPC版へ、格闘ツクールやアクションゲームツクールを経て、多少の変化はあれど制作スタイルの根幹は大きくは変えていません。成果を残せているかどうかは怪しいですが、それでもツクール制作者として未だ生き残れていることは胸を張っていい事だと自負しています。

実を言うと桃栗さんは記事の文末では「やっぱりゲーム作りは計画を立ててから行うのが一番ですネ」とまとめています。なのでこの記事を桃栗さんが見たら「自分に都合の良い切り抜き方してんじゃないわよ!」と怒るかもしれません。でも今でも通ずる制作スタイルに大きな影響を与えてくださった内容として、敢えて触れさせていただきました。そんな桃栗さんが2021年10月31日に亡くなった、という知らせを見た時には本当に衝撃が走りました。年齢を深く詮索することはしませんが、少なくとも若すぎるということだけは間違いないかと思います。

今一度「ありがとうございました」という言葉をもって締めくくらせていただきます。

 

(夢幻台 様)

夢幻台様:Twitterアカウント